これもよくご相談をうけるものです。例えば、このような内容です。
例)生活保護受給中のAさん。長い間病気を患っていました。Aさんは、病気が原因で緊急入院、帰らぬ人に。。。Aさんが居住していたアパートにはAさんの財布に入った現金数千円の他、家財道具がぎっしり。これらの処分をお願いに市役所の福祉事務所に相談したところ「すでに死亡した受給者の件なので、何も話すことはできないし、市役所で処分などの対処はできない」と言われました。さあ、どうしましょう。
実は、こうした事例はよくある話です。この事例の場合、適法な処理とそうでない処理の2つが存在します。まず、適法な処理です。
本件の適法な処理はこうです。死亡したAさんの法定相続人調査→法定相続人が見つかったら、相続の通知を出し、動産類の処分のお願い→法定相続人がいない、あるいは法定相続人が相続放棄した場合→相続財産管理人の専任申し立て。。。。最終的に財産の処分となります。財産らしい財産がないにもかかわらず、長い期間と多額の費用が掛かります。これでは貸主はたまったものではありません。
実際は、どのようにしているかというと、少なくとも相続人へ通知し、返答がない場合や相続人が処分を断ってきた場合には、「貸主側でやむを得ず処分する」ということが多いようです。ただし、いくら無価値と思われるものであっても、相続人にとっては「大切な形見」と言われることもあります。勝手に処分することには法的には問題がありますので、慎重に取り扱った方がいいでしょう。
近年は少子高齢化、独居高齢者の増加で、賃貸借における上記の問題が増えています。上記のような事態を懸念し、高齢の生活保護受給者の入居を敬遠する事態も起きています。これでは、いわゆる社会的弱者に含まれるこうした方々の生活を支えることはできず、なんらかの方策を考えておく必要があります。自治体によっては、市役所、区役所が高齢者等の入居困難者支援として、賃貸住宅のあっせんを行っているところもあります。また、本件で示した残置物処分の問題が起こらないよう、家賃保証会社による撤去制度の活用や契約時に「借主死亡を原因とした居室内の財産の処分同意書」の取り付けなどを行っているケースもあります。貸す側としても、あらゆる事態を想定して、安心して貸せる状況を作り出すことも、福祉の役割ですし、貸主と借主双方を守ることにもつながります。